湖尻純(こじり じゅん)
だれでもモバイル株式会社 代表取締役
「審査不要・保証人不要でも誰でもスマホを持てる社会」を目指し、通信業界に新しい選択肢を提供。いわゆる携帯ブラックと呼ばれる方々にも通信インフラを提供できるよう、レンタルスマホやMVNO事業の改革に取り組んできた第一人者。現在は、生活保護受給者や生活に困難を抱える方々に向けて、家具・賃貸・通信など生活基盤を支えるサービスをワンストップで展開。
奨学金を借りる際、多くの人が保証人の問題に直面します。
この記事では、奨学金の保証人制度の基本から、人的保証と機関保証のメリット・デメリット、そして奨学金を滞納した場合に保証人に何が起こるのか、その対処法までを解説していきます。
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大学や専門学校への進学を考える際、多くの学生が利用を検討するのが奨学金です。そして、奨学金を申し込む際に直面するのが保証の問題です。
「親に頼めばいいのだろう」「名前を貸すだけでは?」と軽く考えていると、将来、本人だけでなく親族をも巻き込む重大なトラブルに発展しかねません。
現在、日本で最も多くの学生が利用しているJASSO(日本学生支援機構)の奨学金では、申込み時に「人的保証」または「機関保証」のどちらか一方を選択することが必須となっています。
人的保証は文字通り、人が保証する制度です。
原則として親族などに連帯保証人および保証人になってもらい、万が一、奨学金を借りた本人が返済できなくなった場合に、代わりに返済する責任を負ってもらいます。
一方機関保証は、保証機関(JASSOの場合は公益財団法人 日本国際教育支援協会)に保証料を支払うことで、連帯保証人になってもらう制度です。
万が一、本人が返済できなくなった場合は、この保証機関がJASSOに一時的に返済(代位弁済)します。
どちらの制度を選んでも、借りられる奨学金の額や利息(有利子の場合)は変わりません。しかし、責任の所在と費用負担が大きく異なります。
人的保証を選択する場合、多くの人が「保証人」と「連帯保証人」を混同しています。ですがこの2つは法的に負う責任が異なります。
一般的な「保証人」には、民法上、以下の3つの権利が認められています。
一方、「連帯保証人」には、これら3つの権利が一切認められていません。これは、「借りた本人と全く同じ返済義務を負う」ことを意味します。
債権者(JASSO)から請求されれば、本人の返済状況や資力に関わらず、即座に全額(延滞金含む)の返済に応じなければならないのです。
JASSOの人的保証では、この非常に重い責任を負う連帯保証人(原則として親)と、前述の3つの権利が存在する保証人(原則として4親等以内の親族)の、合計2名を選任する必要があります。
※本人が未成年の場合。成年の場合は連帯保証人のみでよいケースもありますが、原則2名と考えるべきです
JASSOでは、連帯保証人と保証人になれる人に以下の条件を定めています。
原則として父母(またはどちらか一方)です。父母がいない、死亡、病気、高齢、自己破産手続き中などの場合は、叔父・叔母・兄弟姉妹などの4親等以内の親族も認められることがありますが、その場合は条件が厳しくなります。
原則として4親等以内の親族(65歳未満が望ましい)で、本人および連帯保証人とは別生計(=生計を別にしている)であることです。また、安定した収入があり、返済完了まで責任を負える資力があることが求められます。
この連帯保証人と別生計の4親等親族という条件から、必然的に「叔父・叔母」や「成人した兄弟姉妹」に依頼が集中するケースが多くなります。
親族に重い責任を負わせる、人的保証を避けたい場合、または頼める親族がいない場合には、機関保証を選択することになります。
これは、一定の保証料を支払うことで、保証機関(日本国際教育支援協会)に連帯保証人の役割を担ってもらう仕組みです。
保証料は、借りる奨学金の総額や返済期間に応じて決まり、毎月の奨学金から天引きされる形で支払います(奨学金の手取り額がその分減ります)。
万が一、本人が返済を滞納した場合、保証機関が本人に代わってJASSOに返済(代位弁済)しますが、本人の返済義務がなくなるわけではありません。
その後、本人はJASSOではなく、保証機関に対して(一括または分割で)返済していくことになります。
なお、機関保証を選択した場合でも、奨学金の振込や返還に関する連絡先として、父母などの連絡先を登録する必要はあるでしょう。これはあくまで事務的な連絡のためであり、法的な返済義務を負う保証人とは異なります。
人的保証を選択することは、親族が法的な重責を背負うことに他なりません。特に連帯保証人の責任は、一般的な保証人とは比較にならないほど重いです。
安易に「名前を貸すだけ」「形式的なものだろう」と考えて引き受けると、将来、ご自身の生活設計を根本から揺るがしかねない事態に発展する可能性があります。
通常の保証人であれば、JASSOから請求が来ても、先に本人に請求してくださいと主張する権利(催告の抗弁権)が認められています。
また、本人が返済できる財産を持っていることを証明できれば、先に本人の財産から差し押さえてくださいと主張する権利(検索の抗弁権)も行使できます。
しかし、連帯保証人には、これら2つの権利が一切ありません。
JASSOは本人の返済状況や財産の有無に関わらず、本人が返済を滞納すれば、いつでも連帯保証人に対して、本人に代わって全額を支払ってくださいと請求できます。
人的保証では、連帯保証人と保証人の2名を選任することが基本ですが、連帯保証人は返済額の全額に対して責任を負わなければなりません。
通常の保証人は、保証人が複数いる場合に保証人の人数で割った金額だけを支払うと主張できます。これを分別の利益と言います。例えば保証人が2人いれば請求額の半分だけを支払います。
しかし、連帯保証人には、この分別の利益も認められていません。
JASSOから請求が来た場合、たとえもう一人の保証人がいたとしても、連帯保証人は奨学金の残額(元本)に加え、それまでに発生した利息や延滞金を含めた全額の支払い義務を負います。
請求時には、分割払いが認められず、この全額の一括返済を求められるケースも少なくありません。
「万が一の時は、本人が自己破産すれば借金はゼロになるのだから、保証人も安心だ」と誤解している方が非常に多いですが、これは大きな間違いです。
自己破産による、免責(借金をゼロにすること)の効力は破産を申し立てた本人にしか及びません。
保証契約は、本人(主債務者)の契約とは別個独立した契約です。そのため、本人が自己破産して返済義務を免れたとしても、連帯保証人が負っている保証債務は1円も減額されることなく、そのまま残り続けます。
実際には、JASSOは本人が自己破産の手続きを始めたことを知った時点で、即座に連帯保証人・保証人に対して、残額全額の一括請求を開始します。
連帯保証人の責任は、本人が死亡したり、行方不明になったりしても終わりません。
本人が死亡した場合、奨学金の返済義務は、まず相続人(配偶者や子など)に移ります。
しかし、相続人が家庭裁判所で相続放棄の手続きを取った場合、奨学金の返済義務は相続人から消滅するでしょう。その結果、JASSOは即座に連帯保証人・保証人に請求を行います。
本人が行方不明・音信不通になった場合でも、連帯保証契約が有効である限り、JASSOは連帯保証人に対して正規の返済を求め続けることができます。
本人の居場所がわからなくても、連帯保証人であるという事実だけで、返済義務から逃れることはできません。
ただしJASSOの奨学金では本人が死亡した場合、それをもって返還が免除される仕組みがあります。
その仕組みを使う場合は、相続人と連帯保証人が連署の上で、JASSOに対して給付奨学金返還免除願を提出しましょう。
奨学金の申込みにおいて、人的保証と機関保証のどちらを選択するかは、重要な決断です。
両制度のメリットとデメリットを比較し、どちらを選択すべきかを確認してみましょう。
| 人的保証 | 機関保証 | |
|---|---|---|
| 保証料(費用) | 不要 | 必要(毎月の奨学金から天引き) |
| 必要な人 | 連帯保証人(原則:親) 保証人(原則:4親等親族) |
不要(保証機関が保証) ※別途「連絡先」は必要 |
| 返済滞納時のリスク | 連帯保証人・保証人が 全額の返済義務を負う |
保証機関がJASSOへ代位弁済 (本人は保証機関へ返済) ※親族に金銭的請求はいかない |
| 選択割合(JASSO) | 約44.2% | 約55.8% |
メリットは、何といっても保証料がかからない点です。機関保証を利用する場合、保証料は毎月の奨学金から天引きされます。
人的保証を選べば、その保証料分が差し引かれず、手元に残る(振り込まれる)奨学金の額面が増えるでしょう。経済的に少しでも多くの支援を受けたい場合にメリットとなります。
デメリットは、連帯保証人と保証人という2つの条件を満たす人を探し、依頼しなければなりません。
特に、叔父や叔母などの親族に、重い責任を負う保証人を依頼することは、精神的な負担が大きく、頼みづらさを感じる人も多いでしょう。
万が一、本人が返済不能になった際に、保証人となった親族の生活を破綻させかねない金銭的リスクを負わせてしまいます。
メリットは、金銭を対価に得られる安心です。保証料を支払うことで、親や親族に万が一の際の重い返済責任を負わせる必要が一切なくなります。保証人探しの手間や、依頼する際の精神的なストレスからも解放されます。
デメリットは、保証料というコストがかかります。保証料は借りる奨学金の総額や返済期間によって異なり、決して安い金額ではありません。
この保証料は毎月の奨学金から天引きされるため、手取り額は人的保証を選んだ場合よりも少なくなります。
また、保証料は返済するものではなく、掛け捨ての費用であるため、奨学金にかかる実質的な総負担額は増えることでしょう。
JASSOの最新データ(令和6年度)によれば、奨学金利用者のうち、約55.8%が機関保証を選択しており、約44.2%の人的保証を大きく上回っています。この傾向は年々強まっており、機関保証の利用が主流となっています。
JASSOも、家族・親族間のトラブルを避ける観点から、機関保証の選択を推奨しています。
どちらを選ぶべきか、以下のケースを参考に判断してください。
将来の不確実性を考慮すれば、保証料というコストを支払ってでも、親族をリスクから守ることができる機関保証を選択する方が良いでしょう。
奨学金の返済は、卒業後から始まりますが、もし経済的な事情で返済が滞ってしまった場合、事態はどのように進展し、いつ保証人に連絡がいくのでしょうか。
最初の返済遅れが発生すると、まずJASSO(またはJASSOから委託された債権回収会社)から本人宛に、電話や書面(督促状)による連絡が入ります。
この段階では、うっかり忘れていたというケースも想定されるため、比較的穏便な督促です。
しかし、この時点で延滞金(年率)の加算が始まるでしょう。重要なのは、この滞納1〜2ヶ月の段階では、まだ保証人・連帯保証人に連絡がいくことはありません。
返済が滞ったまま3ヶ月が経過すると、事態は一気に深刻化します。
JASSOは、本人の情報を個人信用情報機関(JICC)に登録します。いわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。
一度登録されると、滞納を解消してから約5年間は情報が残り続けます。この間、本人は以下のような深刻なデメリットを被るでしょう。
そして、この3ヶ月のタイミングから、JASSOは保証人・連帯保証人に対しても、本人の返済が滞っているという事実を通知(書面)し始めます。
滞納が4ヶ月目に入ると、督促の対象は本人だけでなく、保証人・連帯保証人へも本格的に拡大します。
JASSOから、保証人・連帯保証人に対しても直接、電話や督促状による支払いの請求が届くようになるでしょう。この時点でJASSOは、連帯保証人に対しては本人と同等の支払い義務があると見なし、返済を強く迫ります。
督促状には、このままでは法的措置(裁判)に移行するといった、最後通告に近い文言が記載されるようになるでしょう。
再三の督促にも応じず、滞納が9ヶ月程度続くと、JASSOは最終手段として法的措置に踏み切ります。 裁判所を通じて支払督促の申立て、または訴訟の提起が行われるでしょう。
裁判所から支払督促や訴状といった特別送達郵便が、本人だけでなく、連帯保証人・保証人のもとへも届きます。
これを自分は借りていないからと無視してしまうと、JASSOの請求が全面的に認められたことになり、仮執行宣言や判決が確定するでしょう。
その結果、JASSOは強制執行が可能となり、本人および連帯保証人・保証人の給与、預金口座、不動産などの財産を法的に差し押さえることができるようになります。
では、保証人自身もブラックリストに載ってしまうのでしょうか? 本人が滞納3ヶ月でブラックリストに載った時点では、保証人の信用情報に影響はありません。
しかし、JASSOから保証人として返済を求められ(代位弁済)、保証人自身がその請求に応じず、返済を滞納してしまった場合、今度は保証人の情報が個人信用情報機関に登録されることになります。
つまり、保証人もブラックリスト状態となり、クレジットカードやローンに影響を与えます。保証人になるということは、自らの信用情報もリスクに晒す行為であると認識してください。
奨学金の連帯保証人は、借りた本人と同等の重い責任を負います。安易に引き受けると、将来的に自分の生活を破綻させるリスクさえあります。
これから奨学金を借りる人は、親族に過度な負担をかけない機関保証を検討しましょう。
すでに保証人になっており、万が一請求が来てしまった場合は、絶対に放置せず、まずはJASSOや借りた本人と連絡を取り、必要であれば速やかに弁護士などの専門家に相談してください。