湖尻純(こじり じゅん)
だれでもモバイル株式会社 代表取締役
「審査不要・保証人不要でも誰でもスマホを持てる社会」を目指し、通信業界に新しい選択肢を提供。いわゆる携帯ブラックと呼ばれる方々にも通信インフラを提供できるよう、レンタルスマホやMVNO事業の改革に取り組んできた第一人者。現在は、生活保護受給者や生活に困難を抱える方々に向けて、家具・賃貸・通信など生活基盤を支えるサービスをワンストップで展開。
「何十年も真面目に年金保険料を納めてきたのに、いざ受け取ってみると月額6万円台。家賃と光熱費を払ったら手元には何も残らない…」
物価高騰が続く現代、公的年金だけで生活することが困難になり、老後破産の不安を抱える方は少なくありません。生活が立ち行かなくなった時に、思い浮かぶのが生活保護です。
「年金をもらっていると、生活保護は受けられないのではないか?」
「生活保護を受けるためには、年金を辞退しなければならないのではないか?」
と、思い悩むことがありますが、年金と生活保護は同時受給が可能です。どちらか一つを選ぶ必要はありません。
ただし、これには重要なルールがあります。
本記事では、「生活保護」「年金」「受給」というキーワードを軸に、両制度を併用した場合の具体的な受給額シミュレーションや計算方法を分かりやすく解説します。
本コンテンツは誰モバ事務局が独自の基準に基づき制作しております。ECサイト、メーカー、キャリア等から送客手数料を受領しています。このページにはPRリンクが含まれております。
「年金をもらっているから、生活保護は受けられない」
このように誤解して、ギリギリの生活で耐え忍んでいる高齢者の方は非常に多いです。
しかし、生活保護と年金は同時に受給できます。むしろ、生活保護制度において年金は「受け取れるなら必ず受け取らなければならないもの」という位置づけにあります。
生活保護法には、他法優先の原則というルールがあります。
これは「生活保護を受ける前に、他の法律や制度で利用できるものはすべて利用してください」という決まりです。
生活保護は、あくまで国民の生活を支える、最後のセーフティーネットです。
例えば、怪我をして働けないなら労災保険や傷病手当金、失業中なら失業保険、そして高齢であれば年金といった、他の社会保障制度を優先して使う義務があります。
つまり「年金をもらっているから生活保護は無理」ではありません。正しくは「年金を受け取る権利を行使しても、なお最低限度の生活費に届かない場合」に初めて、生活保護が適用されるのです。
そのため、役所の窓口では「まずは年金の手続きをしてください」と指導されますが、これは受給拒否ではなく、生活保護を受けるための前提条件を整えるステップと言えます。
では、実際にいくら受給できるのでしょうか。生活保護費は、すべての受給者に一律の金額が配られるわけではありません。国が定めた最低生活費に対して、あなたの収入(年金)が足りていない場合、その不足分だけが支給される差額支給です。
計算式は以下の通りです。
支給される生活保護費 = 最低生活費(基準額) - あなたの世帯の収入(年金など)
この仕組みは、「コップと水」でイメージすると分かりやすくなります。
もし、コップの大きさが「13万円」で、年金という水が「6万円」しか入っていなければ、コップはいっぱいになりません。この時、国が不足分の「7万円」を水差しで注ぎ足してくれます。
この注ぎ足された水が生活保護費です。
結果として、あなたの手元には、コップいっぱいの水(最低生活費と同等の金額)が確保されることになります。
生活保護の計算において収入として扱われる(差し引かれる)年金には、種類による区別はありません。
これらはすべて、収入として認定されます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)や民間の個人年金保険などは、公的年金とは扱いが異なる場合があります。これらは原則として「資産」とみなされます。
どちらの扱いになるかは契約内容や自治体の判断によるため、隠さずに相談しましょう。
年金が少なくても、無条件で生活保護が受けられるわけではありません。受給には以下の4つの要件(原則)を満たす必要があります。
預貯金はもちろん、処分して生活費に充てられる資産(使っていない土地・家屋、貴金属、株券など)がある場合は、まずそれを売却して生活費にします。原則として自動車の保有も認められませんが、障害などにより通勤・通院に不可欠な場合は認められるケースもあります。
働ける能力がある人は働いてくださいという要件です。しかし、高齢で働くことが困難な場合や、病気・障害がある場合は、医師の判断などに基づき、この要件は免除または緩和されます。
親族(子供や兄弟姉妹)から経済的な援助を受けられる場合は、それを優先します。ただし、親族にも生活があるため、必ず援助してもらわなければならないわけではありません。 親族に援助を断られたとしても、生活保護の受給は可能です。
年金や各種手当など、他の制度で利用できるものはすべて活用します。
これら4つをすべて満たし、それでもなお生活費が最低生活費に満たない場合に、生活保護の受給が決定します。
生活保護費は、住んでいる地域や世帯の人数によって、最低生活費(=生活保護の基準額)が異なります。
受け取れる金額の目安と、意外と知られていないメリットをシミュレーションしてみましょう。
生活保護の基準額は、全国一律ではありません。
地域の物価水準に合わせて、級地(きゅうち)というランク分けがされており、1級地(都市部)から3級地(地方)まで支給額に差があります。
基準額は主に以下の2つで構成されています。
例えば、同じ単身高齢者でも、東京23区(1級地-1)と地方の町村(3級地-2)では、支給基準に数万円の差が出ることがあります。
毎年の年金改定などで年金額が増えた場合、その増えた分だけ生活保護費は減額されるというルールがあります。
これを「いたちごっこ」のように感じ、「年金が増えても意味がない」「損をした気分だ」と嘆く受給者の方は少なくありません。
しかし、見方を変えれば「どんなに年金が下がっても、最低生活費のラインまでは必ず国が補填してくれる」という究極の安定状態にあるとも言えます。
物価高騰時などには生活保護基準自体が見直されることもあるため、安心して制度を利用し続けてください。
まだ65歳未満で、障害年金などを受け取りながら生活保護を利用する場合、あるいは将来の無年金を防ぐために年金に加入している場合、年金保険料の支払いはどうなるのでしょうか。
生活保護(生活扶助)を受けている期間は、国民年金保険料の支払いが法定免除となります。手続きをすれば保険料を払わなくても「未納」にはなりません。
ただし、免除期間分は将来受け取る老齢年金額が、保険料を全額納めた場合よりも少なくなります(国庫負担分の2分の1は受け取れます)。
病気や怪我で働くことが難しい方にとって、障害年金は命綱です。しかし、障害基礎年金(2級)の支給額は月額約6万8,000円(令和6年度)。これだけで家賃と生活費を賄うのは非常に困難です。
「障害年金をもらっているから…」と諦める必要はありません。障害があるからこそ適用される特例(加算)により、一般的な受給者よりも手厚い保護を受けられる可能性があります。
まず大前提として、障害年金と生活保護は併用可能です。 年金は収入として差し引かれると解説しましたが、障害をお持ちの方の場合、最低生活費の枠(コップの大きさ)そのものが一般の方より大きく設定されるという大きな特徴があります。
これは、障害があることで生じる特別な出費(通院交通費やおむつ代、生活のしづらさなど)を考慮し、国が健常者よりも多く生活費が必要と認めているためです。
つまり、障害年金という収入があっても、それ以上に必要な生活費の基準が高くなるため、生活保護を受給できる可能性が十分に残り、かつ生活水準も一般の単身受給者より高く維持できるよう設計されています。
枠が広がる仕組みの正体は障害者加算です。生活保護受給中に以下の条件を満たす場合、毎月の生活費に一定額が上乗せされます。
「障害年金をもらい始めると、その分、生活保護費が減らされて損をするのでは?」と心配される方がいます。
確かに、現金として支給される生活保護費は減るでしょう。しかし、障害者加算がつくことで、世帯の手取り総額(最低生活費)は確実に増えます。
(例)
障害年金(約7万円)が入っても、最低生活費(15万円)には届かないため、差額の8万円が生活保護費として支給されます。結果、手元には合計15万円が残るでしょう。
障害年金を申請する際に知っておかなければならない注意点が、遡及請求による返還義務です。障害年金は、認定されれば過去(最大5年分)に遡って、まとまった金額が一括で振り込まれることがあります。
通帳に大金が入り、つい「これで欲しかった家電が買える!」と使ってしまいそうになりますが、絶対に手を付けてはいけません。
なぜなら、その過去の期間にすでに生活保護を受けていた場合、「本来は年金があったはずなので、その期間に支払った生活保護費を返してください」と役所から請求されるからです(生活保護法第63条に基づく返還)。
これを理解せずに使い込んでしまうと、後から数百万円の返還請求が来て、分割返済のために毎月の保護費がさらに削られるという事態になります。
過去分の年金が入金されたら、必ずすぐにケースワーカーへ報告し、精算の手続きを行ってください。
生活保護は、日本国憲法第二十五条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を営むための、国民固有の権利です。あなたが長年、税金や社会貢献を通じて支えてきたこの社会には、あなたが困った時に支え返す義務があります。
現代の日本において、年金だけで生活できない「老後貧困」や「年金貧困」は、もはや個人の努力不足ではなく、社会構造的な問題です。